古代の高原氏とその後裔

1.古代の高原氏
 もと韓国(からくに)氏といい、韓国連源(みなもと)は宝亀八年(777年)に派遣された第14次遣唐使の録事に任命されており、唐からの帰途、済州島に漂着し略奪・留置されたが密かに脱出し、宝亀九年十一月十日に40余人を率いて帰国したと『続日本紀』にあります。

 『続日本紀』桓武天皇・延暦九年(790年)十一月十日条には、外従五位下・韓国連源らが奏上して先祖の物部連塩児によって父祖が使者として遣わされた国の名によってわざと物部連を韓国連に改めたが、韓国連は三韓から新たに渡来した人民のようで、名乗るたびに人の耳を驚かすので、居住地に因んで姓を賜うのが古今に通じる決まりなので、高原のウヂ名に改めたいと言上し、天皇が許可したとあります。

 また、『日本後紀』嵯峨天皇・弘仁三年(812年)一月八日条には故下野介外従五位上・高原連源に、善政が後代に伝わるほどのものであったことにより、従五位下を贈ったとあります。

 しかしながら、『続群書類従』坂上系図所引の『新撰姓氏録』逸文では、韓国忌寸は阿智使主の子孫(いわゆる東漢氏の一族)であるとしているので、この記述がもっとも信頼がおけるものと思われ、『新撰姓氏録』によれば、和泉国神別の韓国連は物部氏の一族で、武烈朝において先祖が韓国に派遣されたことに因んで、復命の日に韓国連を賜ったとされているが、物部氏から渡来系を意味する氏(ウジ)への改姓は疑わしいと考えます。

 以上から、『続日本紀』の物部連を韓国連に改めたという話は信じ難く、元々は韓国連であったが、のちに韓国忌寸に昇格した者や高原連に改姓した者がいたというのが真実で、物部氏との姻戚関係までも否定できないが、この氏は朝鮮半島から渡来した氏族であったと考えられます。

 高原氏への改姓は桓武天皇が長岡京にいた時代のことなので、現在の京都府長岡京市近くに名字の地があったものと考えますが、現在のどこかは不明。
 京都市左京区には田中高原町があり、それは平安京の大内裏の東北東約2.5kmの地点に位置するので、平安京に移ってから、中央官人としてこの場所から大内裏に出仕していた可能性が考えられます。

2.直島領主・高原氏とその後裔
 讃岐の武士団は古代の豪族で国造でもあった綾氏の系譜をひくとされ、のちに綾氏は藤原姓を名乗るようになる。
 『寛永諸家系図伝』の直島領主・高原氏も藤原姓を称しているのは綾氏の支族と認識していた結果かもしれない。
 しかし、讃岐には高原の地名が見当たらず、綾氏の支族とは思われない。
 綾氏の支流の香西元長は細川政元の助力を得て、明応六年(1497年)には山城国の守護代になったので、高原連源の流れをくむ京都の高原氏は香西元長の抜擢により直島領主になった可能性が考えられます。

 『寛永諸家系図伝』などによれば、直島領主の高原氏は次利―次勝―直久―徳寿―内記―仲頼と続きますが、養子の仲頼の時にお家騒動があり寛文11年(1671年)に改易され、仲頼は実家の山谷藩谷家へ、内記は備中松山藩水谷家へお預けとなっています。
 次利は黒田官兵衛と親交が深く、次利の弟は福岡藩士になっています。
 また、佐賀藩士や熊本藩士にも高原氏がみえます。
 直島・高原氏改易ののち、直島は天領となり倉敷代官所の管轄となりました。
 従って、九州や岡山県西部の高原氏はこの直島・高原氏の後裔ではないかと思われます。

3.平安時代の高原氏の様相
 『古代氏族系譜集成』には鈴木真年が収集・編纂した「韓国連、高原連」の系図が掲載されており、そこには下級官人と国衙の官人になった家がありますが、残念ながら平安時代の途中までしか書かれていません。
 下級官人の地位としては、主税少允・右兵衛少志・大舎人・治部省掌などが見られます。
 国衙の官人としては、貞観年間に備前権介として下向した者の後裔には邑久郡土師村(岡山県瀬戸内市長船町)に住み土師大夫と称して片山神社の禰宜を務めていた者もいたようです。
 系図の最後まで掲載されているこの神官家が、この系図を所持していたのでしょう。 
 また、仁和3年に下野判官代として下向した家の後裔には、河内大夫を称する者や鎮守府軍曹になった河内氏がいます。
 さらに、畿内では摂津目の官人が見えます。

4.高原氏の分布
 ウェブサイトの「日本姓氏語源辞典」の高原氏の名字分布の市区町村順位では上位から順に、岡山市(約1200人)、姫路市(約700人)、尾道市(約500人)、倉敷市(約500人)、高山市(約300人)、福山市(約300人)、西尾市(約300人)、岡山県和気町(約300人)、福井市(約200人)、玉野市(約200人)となっており、全国の高原氏の祖は古代の高原連源だった可能性が考えられます。

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